Kerberos Panzer Jäger

プロテクトギアの動力源は人力だそうな(w


映画「紅い眼鏡」から始まってアニメ「人狼」漫画「紅い足跡」まで続く、いつの間にか押井守のライフワークとなったケルベロスサーガの最新作で連続ラジオドラマだった「ケルベロス鋼鉄の猟犬」が遂に26話「殲滅」にて完結した


ケルベロスサーガってのは一応、説明すると

大戦敗戦後、戦勝国ドイツの占領統治から脱却し再び近代国家を目指し始めた日本
戦後の混乱は反政府組織の台頭、犯罪組織の武装化などの治安の悪化を招いた
政府は凶悪化する組織犯罪に対し警察とも自衛隊とも違う首都圏にのみ権限をもつ第三の武装組織「首都警」を設立、これに対応した
しかし復興の進む中、反政府組織の路線変更による武力闘争の放棄、犯罪組織の解体により倒すべきは敵を失いつつあった首都警は肥大化した牙を持て余しつつも尚も武力を追い求め、その存在は時代に取り残され孤立を深めていった

その首都警の中、獣面人身の装甲服を纏い強力な火器で武装した特機隊員たち、彼らは地獄の番犬「ケルベロス」と呼ばれていた

作品毎に微妙な差異があるけど、これがケルベロスサーガの基本ラインで



んでどのようなメディアでの展開がされたかというと

まずケルベロスサーガ第一作となる「紅い眼鏡」は、声優千葉繁のPVとして企画されたものらしく、出演者は主役に千葉繁、他にも鷲尾真知子田中秀幸玄田哲章兵藤まこ永井一郎天本英世大塚康生 としてマニアには豪華すぎる内容だったが、興行的にはまったくの失敗作でしか無かったのだが、その設定やプロテクトギアと呼ばれる装甲服が好き者の間で評判となり(押井の著書によると、撮影現場に現れたプロテクトギアに群がる好き者の姿を見て、映画の失敗と方向性を確信して愕然としたって記述がある)当時「チョコレートパニック」でマニア間で人気があった藤原カムイを作画担当としコンバットコミック誌上にて「紅い眼鏡」の前史となる「犬狼伝説」を発表した、これがマイナーながら評判を獲得し次の作品として実写映画「ケルベロス」を製作、発表するも又もや大失敗となり完全に息の根を止められたと思われたが、映画「パトレイバー」で再評価され「攻殻機動隊」で着実にキャリアを積みあげた押井が、突如少年エース誌上にて作画・藤原カムイで「犬狼伝説・完結編」を連載開始、それに連動するようにプロジェクトIGは劇場用アニメ「人狼」を発表、「犬狼伝説」を完結させた押井は今度は作画に杉浦守が担当した「紅い足跡」を発表した、と


これが今までのサーガの推移なんだけど、これまでの作品は戦後の日本での首都警の興亡の歴史と特機隊員・都々目紅一の逃亡と闘争が書かれてたのに対し「ケルベロス鋼鉄の猟犬」は世界大戦末期のドイツ軍の鬼子「第101装甲猟兵大隊」別名ケルベロスの東部戦線における戦いと滅びの物語と首都警につながる戦後日本へのミッシングリングを埋める内容になってる

ヒトラーが対外的に国家の威厳を示すために設立した親衛隊でもなく国防軍でもない第三の軍隊「第101装甲猟兵大隊」
それは兵隊に獣面を模したガスマスクに甲冑を着せ重火器で武装させた儀仗兵以外の何者でもなかったが、敗戦後のドイツ国民の熱狂的な支持を受け戦後ドイツの再軍備の象徴となっていた

だがヒトラー暗殺よるナチス解体により親衛隊の解体、軍部の再編においても第三の軍隊であった第101装甲猟兵大隊は存在を続けた
国防軍を中心に再編された軍部からは悪しき時代の遺物として憎まれ疎まれた第101装甲猟兵大隊だったが東部戦線において驚異的な戦闘能力を発揮する
そして彼らはその戦闘能力の為に常に激戦地に配属され満足な補充も受けずにただ滅ぶ為だけに戦い続けるのだった


これが映像の無いラジオドラマという形式の為か登場人物のセリフはアニメの時ですら説明的で膨大な状態なのに更に輪をかけた状態で5分以上喋りっ放しはザラ
ゆえに声優は押井作品ではおなじみのメンバーやらでかなり豪華で
主役の宣伝中隊のマキ大尉に榊原良子、ホラーバッハ曹長池水通洋ケルベロスの首領マイヤー大佐に大塚明夫、他にも清川元夢江原正士矢尾一樹、おまけに竹中直人までもが出演している

これがもうあの押井独特のセリフ回しで長々と喋り捲るもんだから濃い濃い(w


んで3月に完結したこの物語ですが、この物語の劇場映画化も企画されてるし、ラジオドラマは今度は全国34ネットで放送されるそうなので、聞ける環境にあるなら一度は聞いてみて欲しいですね


補足ってか思い出した
押井のラジオドラマって言うか
音声のみの作品はこれが最初でなく
昔テックウィンにてドラマCDで「不帰の迷宮」ってのをやってた
脚本は押井守 伊藤和典 千葉繁の持ち回りで
出演は山寺宏一古本新之輔、土師考也、永井一郎とこれも豪華
ラジオドラマなのに喋れないキャラとかメタ展開のラストとか無茶苦茶やってたなぁ(w

あと押井の実写映画のDVD-BOXの特典で
紅い眼鏡を待ちつつ」ってドラマCDもあった
これは紅い眼鏡の冒頭部分、都々目紅一の帰国を待ち受ける公安部員(大塚明夫)が後輩に回想という形で犬狼伝説の世界観を説明する内容だった